「墓前で謝罪を」保釈されずに病死の夫 妻がみつめた無念 大川原化工機冤罪事件で判決

大きな窓からは、富士山が一望できる。夫妻が終の棲家にと、静岡に移住したのは5年前のこと。

「2人になったら、富士山が見えるところで野菜を作ったり、小屋をつくってそこで竹細工をしたいな」

妻に老後の夢を語っていた技術者は、2021年2月、都内の病院で息を引き取った。機械メーカー「大川原化工機」の顧問だった相嶋静夫(あいしましずお)さん、当時72歳。相嶋さんは警視庁に兵器の製造に転用できる機械を不正に輸出したとして社長らとともに逮捕、その後、東京地検に起訴された。しかし、相嶋さんが亡くなってから5カ月後、東京地検は起訴を取り消した。相嶋さんは、東京拘置所に勾留されている間に胃がんの診断を受けたが、満足な治療が受けられず、自身の潔白が証明される前にこの世を去ってしまった。

「二度と同じような思いをする人がいないように…」妻が取材に応じてくれた。

(テレビ朝日社会部 吉田遥)

「やっと経営から離れて実験できる」

相嶋さんが勤めていた「大川原化工機」は液体を高温で乾燥させて粉末化する噴霧乾燥器を開発・製造する機械メーカーだ。粉ミルクや、コーヒーなどの食料から医薬品まで、様々な用途に使われている。相嶋さんはこの会社の技術部門のトップを務めたのち、静岡の同社研究所で後輩の育成や商品開発などをしていた。夫婦2人で静かな生活を楽しむため、富士山の見える家も買った。

妻は、当時の相嶋さんの様子を、「もともと実験や観察が大好きな人で、学生時代から実験まみれ。やっと経営から離れて実験できるとすごい嬉しそうだった。目がキラキラ輝いていた」と振り返る。

しかし、その生活は長くは続かなかった。2018年、警視庁公安部の捜査が始まったからだ。容疑は、「生物兵器に転用可能な噴霧乾燥器を無許可で輸出した」というもの。

「警察にいくら説明してもわかんないんだよね、と困り果てていた。何とかわかってもらいたいという気持ちで毎月1日がかり。だいたい夕方に帰ってきて、次の事情聴取の時には時間を守って行くというのを毎月毎月やっていました」

「警察の方にもお茶を」破壊された平穏な生活

相嶋さんは聴取に応じるため、静岡から東京の原宿署まで通い続けた。同僚ら約50人も、あわせて250回以上にも及ぶ任意聴取を受け、捜査に協力していた。

にも関わらず、警察の姿勢は変わらなかった。2020年3月の朝、突然5人の警察官が静岡の自宅にやってきたのだ。

「何の説明もなく、ちょっと一緒に来てくださいと」
「主人もなにがなんだかわからないけれど、『警察の方にもお茶をあげて』と」
「そこまで心遣いをしていたのに、何にも通じなくて、連れていかれてしまいました」

昼ご飯はきちんと食べたのだろうか、夜には自宅に帰ってくるのだろうか。妻はその日、不安で眠ることができなかった。そして次の日、妻がテレビで目にしたのは、手錠をかけられた相嶋さんの姿だった。

長引く勾留…体調が日に日に悪化

東京拘置所 相嶋さんは約8カ月間ここで勾留された

2020年3月11日、警視庁公安部は相嶋さんら3人を外為法違反の疑いで逮捕した。3人は一貫して「噴霧器は生物兵器には転用できず、輸出規制の要件には当たらない」などと無罪を主張したが、東京地検は相嶋さんらを起訴、再三の保釈請求も認められず、東京拘置所での勾留が続いた。

妻は面会で、相嶋さんになぜこんなことになったのか、尋ねたという。普段はどんな質問にも答える相嶋さんの返事は一言、「わからない」。少しでも相嶋さんを励まそうと面会を続けたが、相嶋さんの様子はみるみるおかしくなっていった。

顔は白く、拘置所の職員に付き添われながら車いすで面会に応じるようになった相嶋さんに、妻はうそをついて罪を認めたらどうかと提案したこともあったが、相嶋さんはうつむいたままだった。

勾留開始から7カ月 胃がんがみつかるも裁判所は保釈を許さず

逮捕から半年後の2020年9月、相嶋さんは貧血の症状を訴え、輸血を受けた。拘置所内で内視鏡検査などを受け、10月上旬に胃がんが判明。相嶋さんの家族らはすぐに保釈を求めたが、許可はおりなかった。証拠を隠滅する恐れがあると判断されたからだ。

「本人も死にたくなかったし、家族も死んだら困る」
「神様がいるんだったら、もう助けて下さいって、毎晩毎晩祈りました」
「拘置所で死なせられないと思って、なんとか病院に運びたいと思っていたけど、あまりにも遅すぎちゃった」

「泣いていました、涙がつーっと」

胃がんが見つかってから1カ月以上経ち、保釈は許されぬままだったが、一時的に勾留停止が執行され、ようやく病院に入院。しかし入院中、相嶋さんから事件について聞くことは、できなかった。

「もう食べられない、水も飲めない状態でもう駄目だと思って。緩和病棟にすぐ入院して、もう何も聞けなかったです。 主人も言いたいことあったと思うけど、言えなかったでしょうね。ただただもう、CTした時に自分の肝臓が肥大しているのを見て、泣いていました」

入院から3カ月後の2021年2月7日、相嶋さんは息を引き取った。

「泣いていました。涙がつーっと。悔しさが伝わってきて、言葉がなかったです」

「立件方向にねじ曲げ」初公判直前で起訴取り消し

相嶋さんが亡くなってから5カ月後、事件は急展開する。2021年7月、初公判の4日前になって、東京地検が起訴を取り消したのだ。

検察は、警察から送致された証拠をもとに、必要であれば再捜査を行い、裁判にかけるかどうかを判断する。当時、起訴取り消しの理由を、東京地検は「再捜査の結果、輸出規制の要件にあてはまらない可能性が出たため」と説明した。

警視庁の任意捜査の段階から、相嶋さんらは、規制要件にあてはまらない旨を主張してきた。

なぜ、誰もブレーキをかけることができなかったのか。

家族や会社は、国と警視庁を管轄する東京都に対し、約5億7000万円の損害賠償を求め民事裁判を起こした。

「間違いがあったとは思っていない」

法廷で、当時捜査を担当した検事は、こう証言した。

「そこに戻ってどういう判断をするかというと、同じ判断をします。ただ、起訴後、公訴取り消しがされていることはわかっていますので、起訴後にどういう事情で公訴取消しになったのか分からなかったですが、検察官として真摯に受け止めたいと考えています」「当時の判断に間違いがあったとは思っていないので、謝罪はありません」

しかし、関係者によると、検事は起訴の1週間前、警視庁側に対し、
「不安になってきた。大丈夫か。私が知らないことがあるのであれば問題だ」と話していたという。

そして、別の検事が再捜査をした結果、起訴取り消しを決めた際には、「法令解釈を裁判官に説明できない。『意図的に、立件方向にねじ曲げた』という解釈を裁判官にされるリスクがある」と説明したことがわかっている。

検察内には、明確な決裁ラインがあり、起訴を取り消す際には、検事総長の決裁も必要になる。なぜ、起訴を取り消したのか。捜査当局が、遺族に謝罪することはないのか。当時の検察幹部は、記者の問いに、こう答えた。

「再捜査をしてみてこれはダメだとわかったから、“撤収”した」
「裁判で証言した検事は、堂々としていて立派だった」

「どこにも行く気にならない」

今、静岡の自宅には、相嶋さんの妻が一人で暮らしている。生前、相嶋さんが庭に小屋を作るために買った材料は残されたままだ。

相嶋さんの仏壇の周りには、家族や孫に囲まれた生前の相嶋さんの写真が飾ってある。相嶋さんの妻は、「喪失感や悔しさで立ち上がれないくらい、気持ちはぼろぼろ。楽しい気分になれなくて、どこにも行く気にならない」と言いながらも、取材に応じてくれた。

今年7月になり警察庁は、過去に発行した警察白書から、事件の記載を削除した。しかし、当の警視庁や検察からの謝罪はいまだにない。

「いくら給料がよくても軍需産業に関わる会社には行きたくない」

生前、相嶋さんは自身の仕事に誇りを持っていた。学生のころから妻に力説していたという。

「いくら給料がよくても、軍事産業に関わる会社にはいきたくない。表向きはいい会社でも、裏では弾薬作って輸出している会社もある。でも俺はそんなところにはいきたくない」

そんな相嶋さんが、生物兵器に転用可能な恐れがある機械を輸出した疑いをかけられ、名誉を回復されたことも知らずに、亡くなってしまった。

「賠償金なんていらない」「お墓の前で謝ってほしい

妻が声を震わせながら、何度も口にしていたのが、捜査当局への怒りだ。

「主人を連れて行った5人の警察官は、私に黙って連れて行ったんだから、ちゃんと謝罪してほしい。私たち家族の願いは、賠償金なんかいらないから、お墓の前で申し訳なかったって、謝ってほしいと思います。謝ってもらわないと、何も改まらない。それだけは強く言いたいです」

東京地裁は27日、逮捕・起訴は違法だったとして国と東京都に約1億6000万円の支払いを命じた。

判決を受けた警視庁と検察庁のコメントだ。

警視庁「判決内容を精査した上で今後の対応を検討してまいります」

東京地検・新河隆志次席「国側の主張が一部認められなかったことは誠に遺憾であり、早急に、関係機関及び上級庁と協議をして適切に対応してまいりたい」

テレビ朝news2023年12月27日

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無罪判決が確定すれば、刑事補償法に基づき、拘禁された日数に応じて補償がされますが、極めて低額です。具体的には、1日あたり1000円~1万2500円です(刑事補償法4条1項)。しかも、自動的に補償されるのではなく、無罪判決を行った裁判所に対して、無罪判決確定から3年以内に請求しなくてはなりません。また、補償がなされるのは無罪判決のみなので、不起訴処分や、裁判中に捜査の誤りが判明した場合などに行われる公訴の取消しの場合は、補償の対象外です。金額が少なく、穴も多い補償金制度…国賠裁判で勝つのも難しいです。

日本の司法って本当に野蠻国家と同じ。
推定無罪・疑わしきは被告の利益に・なんて全く存在しないし・・・
無実の罪の人を有罪にして一体何が楽しいのだろう?
何のペナルティーもない警察と検察と裁判所。
無実の人を逮捕拘留しても良心の呵責すらない。
無実の人間を起訴しても平然と日常生活を送る。
無実の人間に有罪判決を下す(確信犯)正義の味方気取り。

障害ある受刑者に虐待か 刑務官が昼食与えず…耳元で拡声器で大声も 

長野刑務所の訓練担当の刑務官が、精神や身体に障害のある50代男性受刑者に対して
昼食を与えないなどの虐待を行っていた疑いがあり、NPOが法務省に調査を申し入れたことがわかりました。

調査を申し入れたのは、受刑者の人権問題などに取り組むNPO法人「監獄人権センター」です。

センターによりますと、長野刑務所で今年6月1日から15日にかけ、訓練担当の刑務官が精神や身体に障害のある50代の男性受刑者に対し、昼食を与えなかったり、耳元で拡声器を使って怒鳴るなどの虐待を行っていたということです。

また、虐待を見聞きした別の受刑者が、外部に知らせようとした手紙について、不合理な理由で差し止めるなどの行為も確認されたということです。

刑務所の関係者から情報提供があり、センターの弁護士が他の受刑者に聞き取りを行って確認しました。

センターは18日に法務省矯正局に調査を申し入れ、職員に対する処分や虐待防止についての研修を実施するよう求めています。

長野放送12月22日

被害十数人か 児童相談所による拉致入所の幼児にわいせつ容疑、児童福祉施設の元職員逮捕

入所者の未就学の女児にわいせつな行為をしたとして、埼玉県警は7日、県内の児童福祉施設の元職員藤原凌容疑者(25)=大阪府豊能町=を強制わいせつ容疑で逮捕し、発表した。行為を撮影してSNS上で公開していたといい「幼児が好きで、わいせつ行為をSNSに投稿すると承認欲求がみたされた」などと供述しているという。

藤原容疑者宅から押収されたスマートフォンには、容疑者が撮影したとみられる少なくとも十数人の女児に対するわいせつ行為の動画や静止画が保存されていたという。県警が捜査している。

 少年課によると、逮捕容疑は1月23日、勤務先だった同施設内で、未就学の女児の体を触るなどのわいせつな行為をしたというもの。

児童ポルノなど、ネット上の違法な画像の投稿を監視するボランティア団体から「性的虐待の画像を投稿しているアカウントを発見した」と3月末に通報があり、女児の被害が発覚した。保存されていた中には、藤原容疑者が以前に働いていた別の福祉施設で撮影されたとみられる女児の画像もあるという。(朝日新聞11月7日、仁村秀一)

《勾留中の男性が死亡》頭を便器に突っ込んだ状態を放置し、水まで流す所業…警察による人権侵害の中でも、歴史に残る不祥事となった!

警察による人権侵害の中でも、歴史に残る不祥事となった。

愛知県警は1日、岡崎署の留置場で昨年12月に勾留中の男性(当時43)を死亡させたとして、業務上過失致死や特別公務員暴行陵虐などの容疑で留置主任官の警部(46)ら当時署員だった9人を書類送検し、島崎浩志署長(60)を減給、警部を停職3カ月の懲戒処分とするなど、27人を処分。島崎署長と警部は同日、依願退職した。

「男性は公務執行妨害容疑で逮捕されて岡崎署に留置されていました。ただ精神疾患があり、大声を出すなどしたため、警部らはベルト手錠と捕縄を使うなどした。ですが、男性は1週間あまりの勾留中に死亡。警部らが男性に暴行を加えるなどした疑いが浮上し、県警が岡崎署に異例の家宅捜索に入るなど、“身内の恥”の洗い出しに乗り出していました」

男性が倒れ、頭を便器に突っ込んだ状態になっているのを放置

 書類送検と同日に公表された県警による検証結果はおぞましい話のオンパレードだった。

男性が倒れ、頭を便器に突っ込んだ状態になっているのを放置した。頭の入った状態で便器の水を流した。便器にそのまま排泄物を放置した――。

江戸時代の下手人ですら、かくもひどい仕打ちを受けたであろうか、と耳を疑いたくなる内容だった。

手錠などで拘束されて横たわっていた男性を蹴りながら移動させた

「監視カメラの映像の分析から、複数の署員が裸のまま手錠などで拘束されて横たわっていた男性を蹴りながら移動させたことも判明。拘束中の監視を怠っただけでなく、医師に相談したよう装うウソの公文書を作成していたことも発覚するなど、組織犯罪の様相を呈しています」(前出・記者)

 警察官による暴行は度々あり、特別公務員暴行陵虐容疑で逮捕されることもままある。だが、対象の被害者を死亡させ、刑事責任まで追及されるのは異例中の異例のことだ。

捜査関係者が分析する。

「男性の死因は腎不全。単なる暴行だけでなく、持病があったのに医師に相談もせずに投薬しなかったことや、食事や水分の補給も十分にしていなかったことなどが死亡につながったと判断されたのだろう」

 警察全体への信頼を揺るがしかねない不祥事に、警察庁までが動いた。男性の扱いを巡っては、「戒具」と呼ばれるベルト状の手錠などで男性をのべ144時間、身動きを取れなくしていたことも判明していた。

「警察庁は書類送検と同じ日に、全国の警察にベルト手錠による拘束は原則3時間に限るよう通達を出した。今回発覚した使用時間の48分の1で、全国で安易な拘束が広がっていたことを危惧したのだろう」(同前)

基本の精神から見直すべき時かもしれない。

「週刊文春」編集部2023年12月8日

動物以下の扱いで息子は死んだ… 勾留中に死亡男性の父、警察に怒り

「警察に殺されたと思っている」

愛知県警岡崎署の留置場で勾留中の43歳の男性が死亡した問題。ベルト手錠と捕縄で裸のまま拘束、拘束はのべ140時間以上、複数の署員による暴行、持病だった糖尿病の薬の投与の失念……。署が不適切な対応を繰り返した疑いが強まっている。男性の父親(71)は朝日新聞の取材に憤りを口にした。

男性は2017年ごろから精神疾患を発症し、障害者手帳も保有。昨春ごろに仕事に就き、今年10月からは一人暮らしをはじめた。

 「留置場で暴れて、飯も食わんのですよ」。父親は署員からの電話で男性が公務執行妨害容疑で逮捕されたことを知った。11月28日のことだ。この3日前から男性と連絡が取れなくなったため、県警に捜索願を出していた。

暴れる原因を察した父親は「息子は精神疾患の持病がある。入院させて治療してほしい」と訴えた。だが、署員は「勾留中は入院させず、そのまま留置場に入れる」とにべもなかったという。男性の生活を支援してくれる社会福祉法人などを通じて改めて入院治療を求めたがかなわなかった。

署の留置主任官の警部らが県警の調べに男性の衰弱を認識していたと認めつつ、「医師にみせておくべきだった」という趣旨の供述をしていることも判明。県警はこの警部ら署員数人を1日にも業務上過失致死容疑で書類送検する方針。署長ら警視級以上の幹部の立件は見送る。ただ、内規で義務づけられた留置場の巡視を怠ったなどとして人事上の処分を下す方針だ。

警部については保護室内で横たわった男性を足で押したとする特別公務員暴行陵虐容疑のほか、留置管理に関する書類に虚偽の内容を記載したとする虚偽公文書作成容疑でも送検される。事件を巡って立件される署員らは計10人弱となる見通しだ。

男性は昨年11月25日に逮捕され、勾留中の12月4日未明に高度の脱水による腎不全で亡くなった。精神疾患があり、留置場で暴れたために保護室に隔離され、身体を100時間以上ベルト手錠などで拘束された。

朝日新聞社

警察は男性が暴れるなどしたため、のべ130時間にわたってベルト状の手錠や縄などで男性を拘束し、さらに複数の警察官が男性を蹴るなどしました。CBCテレビ11月28日