2018年10月からの生活保護費引き下げとその問題点

(作者:Yoshiki)現在、僕も満額ではありませんが受給をしている生活保護費。

それがなんと今年の10月から減額されるということですので、本日は、急遽その勉強会に参加してきました!

生活保護費の引き下げ

これまで5年に1度のペースで見直しがされてきた生活保護費。前回見直しをした2013年には、これまでに無いぐらいの減額がされました。

さらには今回も減額されるという事がすでに決まっております。

ちなみに減額されるのは、生活保護費の中の「生活扶助」と呼ばれる部分。いわゆる「生活費」にあたる項目で、食費・光熱費・通信費などに使われます。

どのぐらい引き下げられるのか?

ちなみに今回の減額も前回(2013年)同様、3年かけてジワジワと減らされます。今回はその1回めの減額ということになります。

仮に僕のような受給者(30代男性・単身・都内23区在住)はどのぐらい減らされるのか? といいますと、

  • これまでの生活扶助費:79230円
  • 1回め(2018年10月〜2019年9月):77903円
  • 2回め(2019年10月〜2020年9月):76501円
  • 3回め(2020年10月〜):75250円

このように減らされていき、最終的にはおよそ4000円ほど生活扶助費が少なくなるという具合になります。

他の例もあげてみますと、75歳男性・単身・都内23区在住の場合はというと、

  • これまでの生活扶助費:74630円
  • 1回め(2018年10月〜2019年9月):72700円
  • 2回め(2019年10月〜2020年9月):70699円
  • 3回め(2020年10月〜):68840円

という具合になります。

いやー……いくら高齢で食べる量が減るとはいえ、月7万円を切ると生活はかなり切り詰めないといけなくなるでしょう。これは酷い……。

そして単身世帯ばかりだとアレですので、家族4人世帯(夫婦+子ども2人(15歳と10歳)世帯・都内23区)の例をあげますと、

  • これまでの生活扶助費:187,106円
  • 1回め(2018年10月〜2019年9月):183,988円
  • 2回め(2019年10月〜2020年9月):165,733円
  • 3回め(2020年10月〜):159,958円

今回の基準額引き下げについては、単身世帯よりも家族世帯の方が減額幅が大きくなると言われています。しかし、それでも3年間で2.7万円以上も減らされるか普通?

しかも2回めでズドーンと1.8万円分も引き下げられるなんて……受給世帯にとってはかなりの大ダメージになるでしょう。

当初はもっと引き下げる予定だった

しかも、最初はこれ以上にドカーンと引き下げようとしていましたからね。それを「それはやりすぎだろ!!」と内外の有識者から異論があがり、「緩和措置」として今回の金額に落ち着いたという経緯があります。

生活扶助費についてみると、都市部の夫婦子2人世帯では13.7%(月額約2.5万円)、高齢単身世帯(65歳)では8.3%(月額約0.7万円)の減額が見込まれ、あまりに影響が大きいために減額緩和措置で減額率を5%にとどめるという。

生活保護基準を引き下げないよう求める会長声明|神奈川県弁護士会 より引用)

という事はですよ、これでも当初の予定より引き下げ額は少ない。本来はもっとガッツリと減らす予定だったという事です。

https://mainichi.jp/articles/20171215/ddm/041/010/043000c

 

……いやはや、政府と厚労省は本当に何考えているんですかね?

 

今回の保護費引き下げの問題点

それは大きく3点あります。

  1. 一般低所得者層との比較で決めたこと
  2. 保護を受ける当事者の声を聴いていないこと
  3. 生活保護基準部会の誰も「下げろ」と言っていないこと

順番に書いていきます。

1:一般低所得者層との比較で決めたこと

上に引用した「神奈川県弁護士会」の声明に、これについても書かれています。

今回の引き下げの考え方は、国民のうち所得が最も低い10%(「第1・十分位層」)の消費水準に生活保護基準を合わせる、というものである。

しかし、日本では生活保護を利用できる人のうち実際に利用している人は2割から3割程度といわれており、第1・十分位層の中には、本来生活保護を受給可能であるにもかかわらず受給できていない人も多い。その中には生活費を極度に切り詰めざるを得ず、到底「健康で文化的な最低限度の生活」とは言えないような生活をしている人々が少なくない。

生活保護基準部会でも、特に第1・十分位の単身高齢世帯の消費水準が低すぎることについては複数の委員から指摘がなされているほか、同部会報告書(2017年12月14日付)において子どもの健全育成のための費用が確保されないおそれがあること、一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準を捉えていると絶対的な水準を割ってしまう懸念があることに注意を促しているところである。

このように第1・十分位層の消費水準に生活保護基準を合わせる、という考え方は、同基準が憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」を具体化するものであるという点に照らし、問題があるといわざるを得ない。

赤く色をつけた箇所が最も大事なところなので覚えておいてほしいのですが、日本では生活保護を受けられるはずの収入状況にも関わらず、保護を受けたがらない人が非常に多くいます(ちなみにコレを”漏給”といいます)。

なぜ受けたがらない人が多いのか? それには理由は色々あると思いますが、特に2012年ごろから盛んになっている生活保護バッシング。これが一番大きな原因になっているのではないか? と個人的には思っています。

保護を受けられる水準の収入にも関わらず、それをしない。しかし、低収入なことには変わりないので、ギリギリ限界にまで切り詰めながらの生活となってしまう。

そういう人と消費水準を比較すれば、そりゃ保護を受けている人の方が消費は大きくなるわな! んなもん当たり前のことだろーが!! と憤りを覚えずにはいられません。これがまさに国民を騙すための「数字のカラクリ」というヤツですね。

2:保護を受ける当事者の声を聴いていないこと

5年前の2013年に大幅な引き下げを行った際、参議院厚生労働委員会にて全会一致で採択された「附帯決議」には、このように書かれています。

生活保護法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(抄)

参議院厚生労働委員会 平成25年11月12日

七、5年後の見直しに際しては、生活保護受給者数、人口比受給率、生活保護の捕捉率、餓死・孤立死などの問題事例等の動向を踏まえ、生活保護受給者、これを支援する団体、貧困問題に関し優れた見識を有する者等、関係者の意見を十分に聴取した上で、必要な改正を行うこと。

参議院 議案情報ページ内のPDFより引用)

2013年の引き下げ時なので、5年後というのはまさしく今年になります。つまり今回の引き下げは、この参議院決議を完全に無視しているわけです。

しかもふざけているなと思うのが、実は5年前の引き下げ時にも「当事者の声は全く聴かず」に政府は引き下げを断行しました。それがあったからこそ、こうして参議院から釘を刺されていたわけです。しかし、今回もそれをしませんでした。

「当事者抜きに根本制度や政策を決めてはならない」というのは、政治を進める上では常識中の常識なはずなんですがねぇ……?

これで完全に「自民党=弱者を切り捨てる党」となったわけですね。おめでとうございます。このふざけた態度を改めない限り、もう二度と投票してやんねぇからな!!

3:生活保護基準部会は誰も「下げろ」と言っていないこと

「生活保護基準部会」とは、生活保護額が現在において適正か否か? を審査するために集められた学者や専門家たちの組織であります。

生活保護というのは、国が備える重要な「ナショナルミニマム」です。これを現在の自民党政府のような連中が、自分たちに都合よくいじくろうと暴走しないよう「第三者機関」として見張る役割がこの部会にはあります。

5年に1度の保護費見直しの際には、この部会の有識者たちが適正かの審議をするわけですが、これまでに「現行の保護費は多すぎるから下げるべきだ!」というような結論を出した部会員は誰一人としていません。

基準部会委員の多くは長年貧困研究に携わってきた専門家であるが,これまでの基準部会においては,委員(駒村部会長,岩田委員,山田委員,阿部委員)がそれぞれ独自に調査分析を行い,あるべき最低生活費を算定・発表してきた。

その結果は,別紙(※注:開けませんでした)のとおり,生活保護基準(1級地1)が13万8839円であるのに対し,各委員の研究によれば,あるべき最低生活費は16ないし21万円であって,むしろ現行生活保護基準の低さが浮き彫りとなっていた。

生活保護問題対策全国会議 -”基準引き下げ”の結論ありきの拙速な議論に抗議し、慎重な検討を求める「社会保障審議会第12回生活保護基準部会を踏まえての緊急声明」を発表しました。より引用)

むしろこう書かれているように、「現行の保護費は少なすぎるから上げるべきだ」というような意見が、基準部会では大勢を占めています。

しかしながら、前回(2013年)の引き下げ時に政府は「引き下げありき」でこの制度改正を推し進め、基準部会からの意見についても自分たちに都合の良い部分のみを抜き取って引き下げの根拠とし、ついには大幅(受給者によっては10%もの減額)な引き下げを断行しました。

現在行われている「生活保護引き下げ違憲東京国賠訴訟(通称:はっさく訴訟)」でも取り沙汰されていましたが、前回の引き下げ時に当時の厚生労働大臣は

「マニフェストとして国民と約束していたから下げた」

という発言をしたと言われています。

いやいや、ナショナルミニマムという国にとってとても重要なものをね、そんなアホみたいな理由で下げたりしちゃあいけないんですよ……。

自民党はね、そういうふざけた理屈で国の大事なものをどんどん破壊していくんです。お馬鹿なネトウヨどもはいい加減気付けよ。本当に。

おわりに

まあ、もう決まってしまった事なのでね、泣いても笑っても喚いても10月から保護費は引き下げられます。ただ、その引き下げを指くわえて見ているわけではありません。

この3年間の引き下げ期間中に、前述したはっさく訴訟が原告勝利で終われば、2013年の引き下げ以前の受給額に戻るかもしれない。

また、ナショナルミニマムが下がるということはそれを基に計算されている各種社会保障制度の内容も薄くなる可能性があります。それに対して国民が怒りの声をあげれば、そしてあわよくば政権交代でもすれば、この引き下げも止まるかもしれません。

正直に言って確率はかなり低いと思いますが、まあ何もしないで黙っていられるほど人間できておりませんので。これからガンガン、政府の違法性を様々な場で指摘していきたいと思います。

広告

福島第1原発の作業員に「深刻なリスク」=日本は即刻対応を-国連報告者

【ベルリン時事】国連人権理事会に各国の人権状況などを報告する特別報告者は16日、東京電力福島第1原発事故の除染作業員について、十分な被ばく対策なしでの作業を強いられるなど「深刻なリスクがある」として、「日本政府は即刻対応しなければならない」と警告する声明を発表した。9月に、人権理に報告書を提出する。

 

 

声明は「作業員には、移民や難民、ホームレスが含まれているとの情報がある」とした上で「被ばくリスクについての虚偽説明や、経済的困難から危険な作業を強いられる」などの恐れがあり、「深く懸念している」と述べている。

【特集】いざ廃炉の最前線へ~東電福島第1原発・見聞録~

精神科入院の男性死亡 「不適切な身体拘束」両親提訴へ

石川県内の精神科病院に入院していた長男(当時40)が肺血栓塞栓(そくせん)症(エコノミークラス症候群)で死亡したのは不適切な身体拘束が原因として、両親が病院を経営する法人に約8600万円の損害賠償を求める裁判を近く金沢地裁に起こす。精神科での身体拘束をめぐっては最近、こうした訴訟が相次いでいる。

訴状によると、統合失調症との診断を受けていた長男は2016年12月6日に入院。同月20日、両親は病院から「亡くなった」と連絡を受けた。両親は死因は心不全と聞いたが、警察に連絡して司法解剖したところ、肺血栓塞栓症だった。

裁判所に証拠保全の申し立てをして入手した診療録や看護記録などによると、長男は同月14日から手足と体を拘束されていた。食事のときには一時的に腕の拘束を解かれていた。20日は午前10時に身体拘束を解除され、自らトイレに行った後、ベッドの横で倒れているのを発見された。

両親はこの間、2日に1回程度、着替えなどを持って面会に行ったが、一度も会わせてもらえなかった。(朝日新聞デジタル 2018年08月18日 )

生活保護費3億円横領の役所に「人間性弱説」の教訓は根付いたか

生活保護費の横領は3億円以上 大阪府河内長野市「激震」のその後

2013年10月、大阪府河内長野市職員が、少なくとも2億6000万円の生活保護費を横領していたことが明らかになった。河内長野市は職員を刑事告訴し、同時に懲戒免職処分を行った。この他、延べ22名の職員が停職・減給・訓告・文書による厳重注意を受けている。市長・副市長・教育長も、半年間にわたって30%の給料減額を受けた。

2005年から2011年までの間に横領されていた保護費は、1897件、3億2249万1788円に達した。個人による保護費横領事件の金額としては、現在のところ生活保護史上最大だが、主な手段は「白紙領収書の活用」という単純なものだった。

10年にわたってケースワーカー業務に就いていた元職員は、生活保護業務のシステム担当者でもあり、うち4年間は経理担当者でもあった。この、保護費管理における「万能の神」のような状態が、長期にわたる多額の横領の背景となった。もちろん河内長野市は、元職員に対し、横領した保護費の弁済を求めた。

河内長野市はまた、元職員が不正処理を行っていた勤務時間の給与、事件の調査に関わった職員の残業代、弁護士費用、さらに外部調査委員会による調査費用などの損害についても、元職員に弁済を求めた。その合計は、約3000万円に達した。

元職員が弁済を求められた金額は、合計で4億2657万6620円(遅延損害金を含む)となったが、すでに弁済されている。弁済の主な「財源」は、横領された保護費だった。比較的安全な金融商品の購入や預貯金など、蓄財に充てられており、ほとんど消費されていなかったのだ。さらに不動産などの資産を加え、金額確定と同時に弁済が行われた。

また生活保護費の75%は、国が支出している。居所不明の場合には、残る25%を大阪市が支出する。河内長野市は、横領されていた保護費のうち約2億5000万円を、国や大阪府に返還する必要があった。

並行して、刑事訴訟が2013年11月から開始された。2015年1月、懲役3年(執行猶予5年)の判決が言い渡された。2020年には、執行猶予期間も終わる。

金額から見ても、期間から見ても、生活保護の世界を揺るがす大事件だった。しかし、金銭の面でも司法の面でも、ほぼ決着している。

● 高齢化が進む「昭和のベッドタウン」 しかし保護率は意外に少ない

その後の河内長野市は、どうなったのだろうか。そもそも、河内長野市の生活保護行政には、どのような特徴があるのだろうか。

河内長野市は、大阪府南部に位置しており、大阪市のビジネス街からは電車でおおむね30分程度。大都市近辺の典型的なベッドタウンだ。

同市の人口は、1960年頃までおおむね3万人~3万5000人程度で推移していた。しかし1960年代以後は宅地開発が進展し、人口は増加し続けた。人口のピーク は2000年の12万3000人で、その後は減少に転じ、2018年6月末は10万6000人となっている。

同市では、高齢化率も上昇が続いている。2005年以後に特に加速し、2015年には31.3%に達した(全国では26.6%)。今後、高齢化はさらに加速し、2040年には50%(全国では35%)に達すると予測されている。現在すでに、大阪府内の市では高齢化率ナンバーワンとなっている。

人口減少と高齢化率の上昇の背景にあるものは、1960年代から1990年代にかけて同市に流入した働き盛りのビジネスパーソンとその妻の高齢化だ。典型的な「昭和のベッドタウン」のその後である。しかし対照的に、生活保護世帯の高齢者世帯率は高くない。2017年、全国では53%に達していたが、同年の河内長野市では47%だった。増加ペースも、全国に比べれば緩やかだ。なぜだろうか。

また、近年の河内長野市の保護率は、おおむね1.5%前後を推移しており、全国(約1.6%)より若干少ない。なぜだろうか。

脳裏に「水際作戦」の4文字をよぎらせながら疑問をぶつける私に、温厚な面持ちの担当課長は穏やかな口調で語る。

「河内長野市の高齢者は、もともと会社員だった方が多いのです。厚生年金などが充実しており、高齢になっても生活保護がなくても暮らせる方が多いので、高齢化率は高いけれども生活保護の高齢者世帯率は若干低めなのだろうと思います」

担当課長は河内長野市職員となって25年、農林課・広報広聴課・企画政策室を歴任したベテランだ。

担当課長は、2014年4月の異動で、保健福祉部生活福祉課(=福祉事務所)の課長補佐となった(のちに課長)。2013年10月からの数ヵ月間、河内長野市役所には、非常に多数の抗議が電話などで寄せられていた。それらの抗議には、生活福祉課長を含めて3名の管理職が対応していたという。

現在の担当課長が生活保護の現場にやってきた時期は、事件発覚から半年後、「ほとぼり」が冷めた時期だった。しかし横領事件は、国・都道府県・地方自治体で、数多くの制度変更が行われる契機になった。

この後、厚労省は各福祉事務所に対して、窓口での現金支給、すなわちケースワーカーが保護費の現金に触れる機会を極力減らし、口座払いとするように強く指導している。生活保護業務の「適正化」と、ケースワークそのものが円滑かつ柔軟に行われることのバランスについて尋ねると、担当課長は「現在は柔軟でない方向に進んでいると思います」と、率直に答えた。

● 「保護費がなくなった」SOSに 現金を扱わずに対応するには?

窓口での生活保護費の現金手渡しは、金銭管理が難しい人々に対するケースワークの手段の1つでもある。たとえば、どうしてもギャンブルをやめられない人に対して日ごと、週ごとに分割して手渡せば、1ヵ月分の保護費が数日で使い切られることを防げる。また、ATMを利用できない人々もいる。そういう場面では、現在も現金を手渡しするしかないが、河内長野市のケースワーカーは現金を一切扱わない。保護費の手渡しを含め、現金の取り扱いを行うのは、事件後に新設された「福祉総務係」だ。「これで、公金の横領は防止できるのではないかと思います」と担当課長は語る。

職員が公金に触れる機会をなくせば、確かに公金の横領はできなくなるだろう。「猫を追うより、皿を引け」という諺の通りだ。

事件後、ケースワーカーの属する係は1つから2つへと増え、「福祉総務係」を含めた3係体制となっている。ケースワーカーたちの係長は、ケースワーカーの指導にあたる査察指導員だ。ケースワーカーも増員され、1人あたりの担当世帯は100世帯以下に抑えられている。

国が定めた定数は80世帯だが、100世帯以上の自治体が圧倒的に多い大阪府では、際立っている。命令系統の明確化と、無理のない人員配置が必要であることは、営利企業でも自治体でも同様だ。ちなみに、事件前はケースワーカーが不足しており、1人で約160世帯(定数は80世帯)を担当する場合もあった。

● 「現金を扱わない」不正防止策 工夫が生んだ他機関との連携

対人援助の実際は、どうだろうか。

「もちろん、たとえばギャンブルでお金を使ってしまうなど、金銭管理で困られる方はいます。そういう場合は、社協(社会福祉協議会)の日常生活支援事業を活用し、極力、職員が現金を扱わないようにしています」(担当課長)

2013年、生活保護法が改正されるのと同時に、生活困窮者自立支援法が成立したが、実施状況は自治体による差が大きい。河内長野市ではこの制度のもとで、生活保護業務での他機関との連携を強めている。

提携している他機関の事業の1つに「SOS事業」がある。いくつかの社会福祉法人が集まってグループをつくり、拠出金を出し合って基金を創設し、その基金をもとに、何らかの事情で一時的に困っている人に対して支援を行うというものだ。

生活保護費の追加支給は、どのような理由があっても行われない。ギャンブルで消費してしまった場合はもちろん、「盗まれた」「落とした」といった場合も同様だ。とはいえ、支給されたとたんに保護費全額を盗まれたら、1ヵ月間、食品を購入することもできない。そのような場面で、SOS事業が活用されている。

SOS事業の担当者は、保護費がなくなって困っている本人と共に食材の買い物をして、食材を本人に渡す。費用は、本人が後日SOS事業の事業者に返済する。生活保護制度のもとでは、保護費以外の収入は現金・現物とも基本的に「収入認定」(召し上げ)の対象となる。しかしSOS事業による食材支援は、収入認定の対象としない例外に含まれる。

「理由はともあれ、保護を受けている方に『食べるものを買うお金がなくなった』と言われると、何もしないわけにはいきません」(担当課長)

それは、横領事件の背景の1つでもあった。ケースワーカーが援助のために現金を扱う機会そのものが、「出来心」を誘発してしまうのだ。

「現在は、ケースワーカーが現金を扱わずに行える援助の方法を、見つけるようにしています。SOS事業を活用すれば、ご本人の生活が維持できます」(担当課長)

ケースワーカー以外の援助者との人間関係を作る機会にもなるだろう。

● 「白紙領収書」が 存在しないシステムの構築

横領事件については、庁内および外部委員会による徹底した調査が行われ、組織変更、ケースワーカー増員を含めて数多くの対応が行われた。また2015年から2017年にかけて、「河内長野市コンプライアンス推進アクションプラン」が策定され、全庁でコンプライアンスへの取り組みが行われた。

事件発覚から約5年が経過した現在の河内長野市には、「白紙領収書」が存在しないシステムが構築されている。領収書は 1人1件につき1枚の単票で、最初から金額が印字されている。

横領事件当時は、横領を行った元職員がケースワーカーとして書類を作成し、経理担当者として出金処理を行っていた。本来なら査察指導員が内容をチェックするところだが、当時の査察指導員は経理担当者に決裁権限を与えていた。

事件後は、査察指導員が内容をチェックする本来の姿となっている。「これで、支給での間違いは起こらなくなったと思います」と担当課長は語る。

その他、生活保護を状況に合わせて柔軟に運用するための仕組み、一歩間違えれば不正の温床となり得る仕組みは、すべて見直された。必要に応じて柔軟に運用できる仕組みは残しつつ、保護費に関する不正は起こらないように、徹底的な見直しが行われている。

「とにかく、不正の余地を減らすことを徹底しました。ここまでやれば、発生率は非常に低くなると思います。100%は難しいでしょうけれど、目指すところは100%です。不正の生まれるパターンは、まだ見抜き切れていないかもしれませんが、不正ができない状況を極力突き詰めて、実現しています」(担当課長)

また、事件当時はいなかった女性ケースワーカーが、現在は育休中を含めて3人いる。

「母子世帯やDV被害などの困難を抱えた方の家庭訪問に、女性ケースワーカーの同行が可能になりました。生活保護を受給されている女性の方には、『男性ワーカーからセクハラされるのでは』という心配もあろうかと思います。ワーカーも、疑われる不安があります。現在は女性ワーカーがいることで、お互いに安心で有益な状況になっています」(担当課長)

人事異動の他に、定期的な担当世帯の入れ替えや担当地域替えなど、「淀み」を起こりにくくする取り組みも行われている。横領事件は、数多くの教訓と抜本的な取り組み、他機関との連携、担当ケースワーカーの多様性の増大など、数多くのメリットをもたらした。とはいえ、不祥事は不祥事だ。「終わりよければすべてよし」とはいかない。

● 人間は「性悪」ではなく「性弱」 事件が投げかけた重すぎる教訓

事件発覚時の担当課長は、その後数回、厚労省や大阪府の依頼を受け、査察指導員研修などでの講演を行っている。主な内容は、事件の経過と防止対策だ。取り組みの一つひとつは、特別なことではないのだが、多くの自治体で、「したいけれども、できない」と考えられている。しかし大きな事件を防止するためには、その小さな取り組みの積み重ねこそが重要なのだ。

「私が聴いたときは、『とりあえず聴いているだけ』という方は全くいなくて、皆さん、大変真剣でした。事件の経過は『明日は我が身』。わが自治体は、何をしなくてはならないのか。そういう関心が高かったのだろうと思います」(担当課長)

元担当課長は、講演で「人間は性悪ではなく『性弱』」と語っている。人間は弱いから、悪の誘惑に負けてしまう。だから、弱い人間が悪の誘惑に駆られても手を出せない仕組みをつくることが、本質的な対策なのだ。

大学や官公庁の不祥事が続く今、この「性弱」という言葉の重みを、改めて噛み締めたい。

(フリーランスライター みわよしこ)

みわよしこ

強制不妊手術 丹羽元厚生相「恥じている」

強制不妊手術 丹羽元厚生相「恥じている」

旧優生保護法のもと、強制不妊手術を受けさせられたとして男性が国に賠償を求める裁判が6日、東京地裁でも始まる。裁判を前に、丹羽雄哉元厚生相が、日本テレビの取材に応じ、当時、法律の存在自体を「知らなかった」「不明を恥じている」などと話した。

旧優生保護法をめぐっては、改正される8年前の1988年には、国の研究班が、「人権侵害が甚だしい」と指摘する報告書を、厚生相に提出していた。

丹羽元厚生相は、この報告書の提出から4年たった1992年に厚生相に就任している。

丹羽雄哉元厚生相「差別的な偏見に満ちた法律が存在していることを、私自身が知らなかった。かつて政治に携わった者として、1人の日本国民として、不明を恥じている。(国は)過去の過ちを率直に認めて、謝罪と補償をするという方向性を打ち出すべき」

裁判で、国は原告側へ棄却を求め、争うとみられる。日テレビNEWS24、8月6日

——-

以前: 強制不妊手術!48年6月、超党派で議員提案され、同月に全会一致で可決、同9月に施行、49年5月に改正された。

将来: 必ず強制不妊手術と同じく児童拉致誘拐所、児童養護監獄、里親、特別養子縁組、虚偽DV防止法、親子割断などの悪政一齊提訴を!

「ここは刑務所よりもひどい」入管収容者の叫び。彼女たちは、なぜ希望を奪われたのか

品川駅からバスで10分ほど。レインボーブリッジをのぞむ場所にある、東京入国管理局。ここに、557人の外国人たちが収容されていることはあまり知られていない。収容者の多くは、オーバーステイなどによる「強制退去」の処分が下された外国人たちだ。【BuzzFeed Japan / 籏智広太】

【写真】遠い国の悲劇じゃない 日本で私たちとともに暮らす難民たちの素顔

「仮放免」などの手続きを取らない限り、外に出ることはできない。連絡手段は公衆電話と、1回30分間の面会のみ。ほとんどの自由は奪われ、なかには1年以上の「長期収容」を強いられている人たちも少なくない。

BuzzFeed Newsは、その塀の中で暮らす女性たちに面会を申し込み、話を聞いた。

「私たちを、助けてください」と、彼女は透明なアクリル板越しに言った。両手を合わせ、拝むようにして。その目には、涙を浮かべていた。

疑われた「偽装結婚」

「私たちを、助けてください」と、彼女は透明なアクリル板越しに言った。両手を合わせ、拝むようにして。その目には、涙を浮かべていた。

「はやく夫と一緒に暮らしたい。彼のそばにいたいんです……」

涙をすすりながらそう語る韓国人のキムさん(30代、仮名)には、日本人の夫がいる。北関東で石工をしている男性で、知人の紹介で知り合った。

もともと日本が好きで、20代のころから観光客としてなんども訪れていた。ある時を境に飲み屋で働くようになり、そのまま暮らして6年ほどになる。オーバーステイだった。

勤務先のトラブルで、それが発覚。在留許可を求めたが「偽装結婚」を疑われ、まもなく収容されてしまった。もう1年以上が経つ。

「オーバーステイをしたことは反省しています。でも、人を殺したり、何かを盗んだりしたわけではないんです。刑務所だったら期間があるけれど、ここではいつ出られるのか、わからない。本当につらいです」

8人部屋で、プライバシーはない。家族が塀の外にいる人も多く、みな常に精神状況は不安定だ。些細なことでぶつかり合うことも、少なくはない。

弁護士を通じて2度目の「仮放免」の申請をしているが、費用はかさむ。本当に出られるのかという、不安も毎日にようにつきまとう。

「みんな不安で、いつもイライラしてしいる。それでも、いつか出られると、信じて待つしかないんです」

1日に1度、運動場に出られる時間と、公衆電話を通じた「外」とのやりとり、そして何より、月に1度の夫との面会が心の支えだ。キムさんは涙を流しながら、こう言った。

「夫婦で、幸せに、ふつうに暮らしたい。はやく、自由になりたい」

そこは、まるで刑務所だった

 

収容の可否を決めているのは、入国管理局だ。裁判などの手続きを経る必要はない。

入管難民法に基づいた「収容令書」で、最長60日間収容できることになっている。しかし、その後の審査次第では、いわゆる「強制送還」まで無期限に収容できる。

半年を超えると、「長期収容」と言われるようになる。なかには収容所を「はしご」する人だっているほどだ。こうした実態を人道的観点から批判する声は少なくはない。

韓国人のイさん(50代、仮名)は言う。

「もともとは収容所(ママ)があることも、知りませんでした。オーバーステイという悪いことをしたから、1度の収容で『綺麗になる』と思っていた。刑務所と同じように」

イさんには、キムさんと同様、日本人の夫がいる。北関東の工場で働く男性だ。

来日以来、飲食業を転々としていた。仕事先で偶然知り合い、そのまま付き合ったという。結婚を機に、オーバーステイを入管に申し出たが、やはり疑われたのは「偽装」だった。

「本当の結婚をしているからこそ、旦那を捨てて帰るなんてできない」

茨城県の牛久にある東日本入管に収容されたのちに「仮放免」されていたが、その後再び、東京入管に収容されてしまった。合わせて2年以上。申請などに伴う費用は、夫がファーストフード店でアルバイトをして捻出しているという。

「また入れられるとは、夢にも思っていなかったです。なんで同じ罪で……」

朝に起きてから食事をとり、点呼を受け、運動をしたりして過ごす。昼と夜ご飯は弁当だ。夜眠るまで、毎日がルーティン。気晴らしといえば、週に数度、コンビニで売っているものを注文できる機会くらい。

「6人部屋で、人間関係も難しい。同じパターンの繰り返しで、頭がおかしくなりそう」

悩んだ末の自殺未遂

 

イさんのように「仮放免」や、結婚などを理由にした「在留特別許可」を求めることもできるが、なかなか判断は下されない。

いつ強制送還されるかというストレスと、長期収容そのものに耐えきれず、自殺をはかってしまう人も後を立たない。中国人のヤンさん(40代、仮名)も、そのひとりだ。

「外にいた時は、よく寝てよく食べて、とても健康だったのに。ここに入ってから、ずっと苦しいんです」

もともとは中国の貿易会社に勤めていたヤンさんは、仕事の関係で日本に来た。しかし勤務先との関係がうまくいかず、飲食業に転身。そのまま十数年、オーバーステイになっていた。

「日本で死ぬまで暮らそう」と決めてきたといい、建築業を営む日本人の男性と結婚した。3年間の同棲を経た文字通りの「恋愛結婚」だが、ほかの2人同様、偽装を疑われている。

イさんと同じように、一度は牛久に収容され、その後再収容された。すでに計2年半以上。処分の取り消しを求める裁判を起こしているが、施設の職員には「99.9%負けるよ」と言われる。

「中国にはもう何もない。日本には念願の家族がある。だから、日本国籍を取ろうとも考えていたんです。私には、0.1%に賭けるしかないんです」

2度目の収容後には適応障害と診断され、外部の病院に入院していた。自殺未遂は、施設に戻って来た矢先の出来事だった。自らの首を、トイレの個室ドアにタオルでくくり付け、思い切り締めたのだ。

「あまりにも苦しくて……。ここから逃げ出したい、その一心でした」

気を失っているところ、タイ人の女性たち2人に見つけられ、ことなきを得たという。そんなヤンさんは、声を震わせながら、力なくつぶやいた。

「24時間、軟禁されているような気持ちです。いつ出られるのか、いつ強制送還されるのかわからず、毎日が不安でもう耐えられない。入管が、怖い。記者さん、どうか力になってください」

入管の状況は「過去最悪」

「入管はそもそも一時的な収容を想定した施設です。本来であれば仮放免すれば良いのに、長期にわたって収容することで、諦めさせて、帰国に追い込もうとしている」

そう語るのは、彼女たちを支援する指宿昭一弁護士だ。いまの入管が置かれている状況は、「過去最悪」だという。

「2010年には最大規模のハンストが行われて、6ヶ月を大幅に超える長期収容は一時やめられましたが、その後は再開しています。いまでは1~2年を超える収容は当たり前になっています」

難民申請をしている人、日本に家族がいる人、そもそも送還に耐えられない病気を抱えていたりする人――。そんな、帰るに帰れない人たちを、長期収容によって苦しめている、と指宿弁護士は指摘する。

「自由を奪われ、心を病む人がほとんどです。死亡者や自殺者、未遂者も少なくありません。その後もハンストは相次いでいるのに、変化はありません」

法務省入国管理局によると、2009年以降に収容中に死亡した人は13人。うち自殺者は5人いる。

「結婚の実体があるのに『偽装』だと言い張り、収容を続けるケースもある。収容されている人たちだけではなく、その夫や妻、さらには子どもたちをも不安に追いやっているんです」

外国人をめぐる政府の「本音と建前」

取材に応じた女性たちが語る通り、刑務所ならば、ほとんどの場合は「刑期」がある。

しかし入管では、自分がいつ出られるのか、もしくはいつ強制送還されるのか、わからない日々を送らざるを得ない。すべては入管に委ねられているからだ。

「重大犯罪をしたわけでもない、単純なオーバーステイで長期な収容を強いられている人が多すぎる。厳しすぎる、というよりも制度が正しく運用されていないのではないでしょうか」

指宿弁護士は、収容者の置かれている立場をこう表現する。「刑務所よりもひどい」と。

当の入管は、長期収容の実態をどう捉えているのだろうか。警備課の担当者が、BuzzFeed Newsの取材に答えた。

「さまざまな原因があると思うが、なかでも退去強制令書が出されているなかで、日本で働きたい、住みたいという意図から送還を頑なに拒否している方がいることが原因と考えています」

「自らの意思で帰っていただくとすれば明日にでも身柄の拘束は当然とかれ、自由になることができる。本省として速やかに送還をすることによって、収容を終わらせるべきと判断しています」

一方で、病死や自殺などの「事故」については、こう答えた。

「入所者の方の心情把握をしっかりしたり、医療体制の強化をして、事故が起こらなように努めてまいりたい」

政府は6月、外国人労働者の受け入れを拡大する方針を打ち出した。人口が減少して労働力不足が叫ばれる中、産業界の要請に応じたかたちだ。

入管をめぐる現状からは、そんな政府の「本音」と「建前」がはっきりと見える。指宿弁護士は、言葉に力を込めた。

「『労働力』はほしいけれども、『生きた人間』はほしくない。人間を受け入れる以上、新たな負担が生まれるけれども、それを覚悟できず、こちらの用が済めば帰って欲しい。そんな認識が、日本の入管制度の根本にあるのではないでしょうか」BuzzFeed Japan8月5日